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「スープラとしての独自性を保ちつつ最新トレンドのメカを搭載しトヨタの直6FRピュアスポーツカーが帰ってきた!」長らく途絶えていたトヨタの直列6気筒FRスポーツカーが復活。経済性やエコロジーが優先されるこの時代に、したたかなクルマづくりで復興されたスープラは、どんな魅力が与えられたのか、名門ブランドのスポーツカーとの比較から探る! REPORT●山田弘樹(YAMADA Hiroki) PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)/宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)

待望の復活なったスープラを強力なライバルと直接比較

 スープラRZのプロトタイプを袖ヶ浦フォレストレースウェイでテストドライブした時「これは面白いスポーツカーになる!」と直感した。少なくともこれまでの国産スポーツカーとしては類を見ないほど、鋭く刺激的なコーナリングパフォーマンスを秘めていることは間違いないと。

 まだ当時は若干リヤの挙動にナーバスな部分があり、それゆえアクティブディファレンシャルとの連携も不自然な部分があった。しかしコーナーの進入でブレーキを残さずともノーズが入り(直列6気筒ターボを積んでいるにも関わらず、だ!)、クリッピングポイントに向かってアクセルを踏みながら立ち上がっていける特性は、まるで良くできたレーシングカーのようだった。ここまで遠慮なく純粋なレーシングテクニックを要求してくるスポーツカーは、少なくともミドルスポーツの範疇では他に思いつかないと感じた。

 そんなスープラが、この度正式にプロダクトモデルとして発表された。詳細は別項に譲るが今回はこれを、世界に名だたるライバルたちと比べてみようと思う。

トヨタ・スープラ RZ(8速AT)
100万円刻みで設定された新型スープラの3つのグレードは、そのキャラクターもハッキリと差別化。エントリーユーザーから、高度な走りと上質さを求めるハイエンド層までを幅広く受け止め、ピュアスポーツの世界に導いてくれる。

WLTCモード燃費:12.2㎞/ℓ
直列6気筒DOHCターボ/2997㏄ 
最高出力:340㎰/5000rpm 
最大トルク:51.0㎏m/1600-4500rpm
車両本体価格:690万円

スポーツカーの盟主と同じ土俵で闘う実力を持つ

 やはり一番最初に比較せねばならないのは、ポルシェ「718ケイマン」だろう。なぜならポルシェのミ級スポーツカーである718ボクスター/ケイマンは、ずばりBMW Z4と、トヨタ・スープラにとって直接の開発ターゲットだったからである。

 ところでスープラの宝と言えるのは、今回BMWとともに開発した新規プラットフォームだ。当初は両社が持つ素材から相応しいものを探し、これをベースに開発を進めるプランが検討されたものの、その性能目標における志の高さからまったく新しく、プラットフォームを起こすことになったのである。

 こうしてトヨタ・スープラ(とBMW Z4)は、全長4380×全幅1865×全高1290〜1295㎜、ホイールベース2470㎜というディメンションを得た。ホイールベース・トレッド比1.55という超回頭性重視のFRスポーツとなって復活したのである。

 対してケイマンは、全長4385×全幅1800×全高1295㎜のボディに、水平対向4気筒ターボをミッドシップするという、スポーツカーとしては極めてサラブレッドな骨格を持っている。つまりスープラは、このディメンションに“寄せてきた”わけだ。

 厳密なことを言えばこの水平対向ユニットはエキマニのスペースが必要となることから、ドライサンプ形式の縦置きV型エンジンに比べクランクセンター位置が高くなるが、そんなことが許されるのはフェラーリやマクラーレンといった一部のスーパースポーツだけである。そして直列エンジンを縦置き搭載するよりは、水平対向ユニットの方が重心は低い。先代の6気筒自然吸気ユニットから4気筒ターボ化されたのは主に環境性能を理由としており、過給機の搭載で重量もさほど変わらないようだが、それでも一番の重量物であるエンジンを車体中央に搭載し、トランスミッションを直列に縦置きした功績は、運動性能に直結する。

 だからこそ718ケイマンは、今回試乗したベーシックモデル(300㎰/380Nm)でさえ別格の走りを披露する。リヤハッチを持ちながらもボディの剛性感は高く、乗り味はどっしり低重心。試乗車は2インチ大きなオプションの20インチタイヤを履かせていたが、やはりオプションのアクティブサス(PASM)が、これをものともせずに受け止めていた。

 2.0ℓターボは完全なトルク型で、どこから踏んでも力強く加速する。ただ7400rpmのレッドゾーンまでこれを回しても、あまり高回転にうまみは感じられない。

 その点ではパワーこそ劣るがスープラの直列4気筒の方が、ツインスクロールターボの高回転側ブーストが気持ち良い。そして258㎰の「SZ-R」に至っては、パワー感までもが付いてくる。ほどよいパワーを完成度の高いシャシーで踏み倒す総合力で、スープラ「SZ」「SZ-R」は、718ケイマンにも見劣りしない走りが楽しめると筆者は感じた。

 よって「RZ」の直列6気筒(340㎰)と比べるべきは、2.5ℓの排気量から350㎰を発揮する718ケイマン「S」だろう。こちらもスープラは10㎰ビハインドだが、価格は718ケイマン「S」の862万円に対してスープラが690万円と、断然現実的だ。

 そして肝心な走りにおいてもスープラ「RZ」は、4気筒同様718ケイマン「S」にがっぷり四つである。ハンドリングはミッドシップの718ケイマンがそのハンドリングを鋭くなり過ぎないように安定方向へと振っているのに対し、FRであるスープラの方が、「曲がれ、曲がれ!」とアグレッシブに訴えかけてくる。まるで正反対のキャラクターなのが面白い。トラクション性能は後軸荷重の高さからケイマンに軍配が上がるかと思いきや、アクティブディファレンシャルを有するスープラは、アクセルオンでがっつりと後で路面を蹴り出す。どちらが速いのかは然るべき場所で走らせなければわからない。しかし間違いなくスープラ「ZR」は、718ケイマンと同じ土俵に上がっていると言えるだろう。

ポルシェ718 ケイマン(6速MT)
ミドルサイズスポーツカーの絶対的存在。走る、曲がる、止まるといったすべての性能を意のままに操れる操作感は秀逸。新型スープラが最もマークすべきライバルといえる。

JC08モード燃費:―㎞/ℓ
水平対向4気筒DOHCターボ/1998㏄ 
最高出力:300㎰/6500rpm 
最大トルク:38.7㎏m/1950-4500rpm
車両本体価格:673万円 
※最大トルクはNmからの編集部換算値です。

超過激な性能と個性を持つM2のエンジンを許容する⁉

 BMWで一番過激なコンパクトスポーツが、このM2「コンペティション」だ。何を持って“コンペティション”なのかは今ひとつ不明だが、とにかく走りは激辛である。

 その要となるのは410㎰/550Nmを発揮する「S55」型直列6気筒ターボ。これはM3/M4に搭載されるエンジンで性能的にもスープラ「RZ」の6気筒ターボを上回る。

 しかし遠慮せず言えば、その走りは過激に過ぎる。確かにコンパクトだが日常性も考慮した2シリーズのボディは重心が高く、フェンダーを広げ、足腰を固めたとしても、この高出力を持て余している。

 BMWもそれを承知していると見え、タイヤサイズはフロントが245、リヤが265の19インチとなっている。ノーズに長くて重たい直6を積む重量配分はややフロントヘビーだが、それでも敢えてフロントのタイヤサイズを小さくすることで(リヤのグリップを上げたとも言える)、オーバーステアを抑制することに努めている。さらにトランスミッションには6速MTも用意するが、よりシフト操作を素早く正確に決め、ハンドリングに集中できる7速DCTを設定しているのだ。

 だからこそ、思う。もしこのエンジンがスープラに搭載されたら! 同じ直6を搭載しながらも極めてニュートラルなステア特性を持つスープラだったら、きっとサスペンション剛性を少し引き上げるだけで、この最高に刺激的なツインターボユニットを、使いこなせると思うのだ。そしてどうやらそのアイデアは、開発責任者の多田さんのプランにも、既に入っているような気がする。

 話をM2「コンペティション」に戻せば、しかしだからこそこの過激なクーペが、高い人気を誇っているのだとも言える。まだM3が小振りだった頃を彷彿とさせるボディに、最高のBMWユニットを搭載したFRクーペ。そのやっかいな操縦性を持つリトルモンスターに、多くのBMWマニアが惹かれるのだ。

 兄弟車である1シリーズが今年FWDモデルとなることを考えても、2シリーズが継続される保証はない。M2「コンペティション」は、今手に入れておきたい一台なのである。

BMW M2 Competition(6速MT)
典型的な“羊狼”。その小さなボディにM3と同じ強心臓を押し込み、溢れるトルクとパワーを受け止めるために締め上げられたハードな乗り味は、ある種の覚悟が必要。が、ゆえに好事家には堪らない魅力を持つ。

JC08モード燃費:10.8㎞/ℓ
V型6気筒DOHC/3696㏄ 
最高出力:336㎰/7000rpm 
最大トルク:37.2㎏m/5200rpm
車両本体価格:521万2080円

10年経ってもなお魅力を放つ永遠のライバルの展開に期待

 Z34が登場した時の記憶は、今でも強烈な印象として心に残っている。なぜならこの頃私は先代モデルとなるZ33の「バージョンNISMO」のオーナーだったからだ。

 新型だから当然なことなのかもしれないが、Z34はすべてにおいてZ33を上回っていた。トランクのタワーバーを廃したにも関わらずボディ剛性は高く、ゆえによりソフトな足まわりでもコーナリングパフォーマンスは高かった。エンジンは3.5ℓから3.7ℓへと排気量が上がり、パワーは自然吸気のV6ユニットにして336㎰を得た。そして排気系を交換しECUを調律するだけで、空気を切り裂く様な、甲高い叫び声を上げたのである。

 そんなZ34も登場から既に10年以上の月日が流れた。その間「バージョンNISMO」の登場こそあったものの、毎年イヤーモデルを発表していくというプランは主幹の交代で頓挫し、歴史からも少し忘れ去られたような存在となってしまっていた。

 しかしどうだ。今乗ってもフェアレディZは、当時の魅力を失っていなかったのである。

 確かにアスリートのように俊敏な走りのスープラと直接比較すればハンドリングはややスローで、前後バランスは明らかなフロントヘビー。しかし現代の大径タイヤを履いてもボディはしっかりしており、乗り心地に不満はない。

 フロントのダブルウイッシュボーンサスペンションは重たいエンジンを背負いながらがっちりと路面をつかみ、コーナーでは長いホイールベースが挙動を安定させる。だからこそドライバーは安心して、VQ37HRユニットのパワーを解放できる。その穏やかかつナチュラルなステア及びエンジン特性に目を付けたクラブマンレーサーたちが、思い思いに愛車を磨き上げ、サーキットを走っているのは極めて自然なことなのだ。

 スープラほど走りに特化していないとはいえ、Z32まで北米好みだったGT的な走りは明らかにZ33でピュアスポーツ寄りとなり、このZ34でさらに極まった。2シーターに割り切ったレイアウトに市民権が得られたのも、フェアレディZのおかげだと私は思う。

 ゆっくり走らせれば優雅であり、いざ鞭を入れればFRスポーツとしての性能を遺憾なく発揮する。フェアレディZは今でも、そういう素晴らしいスポーツカーである。

 残念なのはその伝統のネームが、なかば置き去りにされていることだけ。今年でフェアレディZは50周年を迎えるが、日産には特別仕様車を発売するだけでなく次期型モデルへの展望も発信してほしいと切に願う。ライバルたるスープラがその起爆剤となる可能性は、十分にある。

日産フェアレディZ Version ST(7速AT)
スープラと双璧をなす、日本のFRスポーツカーとして50年の歴史を持つ。現行型は設計年次の古さは否めないが、気持ち良く吹け上がる大排気量V6NAエンジンの甲高いエキゾーストノートや、自然なハンドリングは未だに魅力的。

JC08モード燃費:9.1㎞/ℓ
V型6気筒DOHC/3696㏄ 
最高出力:336㎰/7000rpm 
最大トルク:37.2㎏m/5200rpm
車両本体価格:521万2080円

ハイエンドからエントリー層まで門戸を開く新型スープラ

 最後はスープラで締めよう。

 その走りに速さと質感を求めるならば、間違いなく最上級グレードの「RZ」を選ぶべきである。プロトタイプからさらにサスペンション剛性を高め、リヤアクスルまわりの安定感もグッと落ち着きを増したRZは、リアルFRスポーツと呼ぶに相応しい完成度を得た。

 しかし価格とパフォーマンスのバランスを求めるなら、「SZ-R」がいい。これは単なる廉価版グレードでは、決してない。

 そのハンドリングは直列6気筒ターボを積む「RZ」よりも素直であり、シャシー性能を活かしきっている。操縦性の素直さはまさに「86ターボ」と呼ぶべき存在、いや、それ以上のポテンシャルを持っている。

 さらに言えばこの「SZ-R」には、チューニングの可能性も大きく残されている。この4発ターボを磨き上げることで、「RZ」よりも優れた回頭性と速さを実現するのは、ひとつのロマンだと言えるだろう。

 スタンダードモデルである「SZ」は、こうした上位機種のイメージを踏襲しながら、よりプロムナードカー的に日常を彩るための一台。「スープラに乗ってみたい!」と思ったユーザーに広く門戸を開き、走りの愉しさに目覚めてもらうための重要なグレードだと思う。

 入門編から本命モデル、そしてハイエンドグレードまで。3つのバリエーションを形だけでなく、中身を伴って用意したトヨタの気合いには本当にアタマが下がる。

 効率化が叫ばれ電動化が急速に進む今、とびきりの内燃機関とフットワークを持つスポーツカーがこの日本から誕生したことは、大げさではなく奇跡に近い。そしてその実力は、世界に名だたるポルシェやBMWにも、決してひけを取らないまでに仕上がっていた。

 だから筆者はスープラの誕生を斜めに見ることなく、素直に喜びたいと思う。

 新生スープラはこれまで燃費性能を愚直なまでに追い求めてきたトヨタだからこそ、つくり得たスポーツカーだ。彼らが本当にやりたかったことが、今ここにある。

(出典 news.nicovideo.jp)