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全日本おじいちゃん大好き協会の皆さん、ついにこの日がやって来た!

 クリント・イーストウッド監督・主演の最新作『運び屋』が3月8日に全国公開された。イーストウッドは『人生の特等席』から7年ぶり、自身の監督作では『グラン・トリノ』から10年ぶりのスクリーン復帰だ。

 今作は2018年12月14日に先行公開した全米では、興収1億ドル突破の大ヒットを記録。イーストウッド監督史上では『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』『グラン・トリノ』『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』に続く6本目の快挙を達成した!

今作で彼が演じるのは、金もなく孤独な90歳のアール・ストーン。商売に失敗して自宅も差し押さえられかけたとき、彼は車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられる。それなら簡単と引き受けたが、実はメキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だった。

 仕事で大金を得たアールはおんぼろ車をぴかぴかの新車に買い換え、肌はしわくちゃで腰も少し曲がっているのに2人の女性と同時にセックスしてしまう。すべてが上手くいくように見えた。しかし、彼にはやるべきことがあった。麻薬取締局のコリン・ベイツ捜査官に追われるなか、彼が気づいたこととは?

 今回は『運び屋』がイーストウッドの集大成と言える4つのポイントを解説。なぜ主人公は「ひどい父親だった」と嘆くのか? 88歳なのにベッド・シーンを演じるワケは? ふたりの親友に捧げた映画? など。

(次ページでは「主人公が「ひどい父親だった」と嘆くワケ」)

1.主人公が「ひどい父親だった」と嘆くワケ

 『運び屋』はイーストウッド演じるアールが、メキシコの麻薬カルテルで運び屋になるサスペンス映画。一方で、実は「家族の物語」でもある。アールは家族よりも仕事を優先しており、長年家族と疎遠だ。はたして「ひどい父親だった」と嘆く彼は家族と和解できるのか?

 今作では、ブラッドリー・クーパー演じる麻薬取締局の捜査官コリン・ベイツが主人公を追い詰めていく。主人公とベイツ捜査官は追う側/追われる側と正反対だが、仕事ばかりで家族をないがしろにするのは共通点だ。

 クーパーと言えば、イーストウッド監督『アメリカン・スナイパー』で、イラク戦争に4度従軍するクリス・カイルという実在のスナイパーを演じたことで有名だ。クーパーが監督を務めるレディー・ガガ主演『アリー/スター誕生』(※1)も、以前はイーストウッドが監督をする予定だった。監督作を譲るぐらいだから、言わば弟子のような存在なのだろう。イーストウッドが弟子である彼に自分と似たような役を演じさせているのも面白い。

(※1)日本ではあまり売れてないのが残念。大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』と同時期に公開されたことや、『Born This Way』以降に人気低迷した「レディー・ガガの復活」という物語性が身近ではないこと、マイノリティーへの言及がわかりにくいことなどが原因か。

 実は、イーストウッドは64年目になるキャリアのなかで「崩壊した家族」を描き続けてきた。代表作のひとつ『グラン・トリノ』では、彼演じるフォードの自動車工だった老人ウォルトは妻を亡くしており、日本車のセールスをする実の息子にさえしかめっ面だ。イーストウッドはいつも家族をなおざりにし、孤独に社会と立ち向かっている。

 ただ、彼の映画の主人公はただ家族と不仲なだけではない。血縁関係のない他人と「疑似家族」になる物語も多い。ウォルトも隣に越してきたマオリ族の少年タオと親密になっていった。

 だが、もっとも最近の主演作『人生の特等席』では心変わりしたのだろうか。彼演じる大リーグのスカウトマンであるガスはひとり娘ミッキーとわだかまりを抱えているが、決して「疑似家族」に逃げようとはしない。次第に野球を通して、彼女と和解をしようとする。

 今作でも、主人公は麻薬カルテルたちと実の家族のように親しくなるが、それも途中まで。イーストウッドの過去作を1本でも見直しておくと、今作でアールが降した決断は涙なしで観られないだろう。著者は試写会で2つ隣の席に座る、映画評論家の蓮実重彦さんと同じタイミングで泣いてしまった……。

(次ページでは「監督&役者で立ち向かった初の実話作品」)

2.監督&役者で立ち向かった初の実話作品

 『運び屋』は2014年6月に『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』に掲載された「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」という記事をもとにしている。レオ・シャープ(今作ではアール・ストーンになっている)はデイリリーというユリの栽培で有名な人物だが、1度に13億円相当のドラッグを運んだこともある実在の運び屋だ。

 イーストウッドは『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』の硫黄島2部作以降、実話にもとづく作品を多く手がけてきた。とくに渡辺謙と嵐の二宮和也が共演した『父親たちの星条旗』は日本で興行収入51億円の大ヒットとなった。2006年の作品だが、覚えている人も多いのではないだろうか。

 ここ最近では、イラク戦争に従軍した実在のスナイパーを描いた『アメリカン・スナイパー』、2009年に起きた「USエアウェイズ1549便不時着水事故」を題材にするトム・ハンクス主演『ハドソン川の奇跡』が大ヒットをした。

 どの作品も主演はブラッドリー・クーパーやトム・ハンクスなどの有名俳優で、決してイーストウッド自身が演じることはなかった。今作は硫黄島2部作以降に実話にこだわり続けてきた彼が、初めて監督だけではなく役者としても立ち向かった実話作品なのだ。この点からも、『運び屋』はイーストウッド映画の集大成にふさわしいと言えるだろう(※2)。

(※2)硫黄島2部作の以前、イーストウッドが関わった実話ものは『アルカトラズからの脱出』や『バード』ぐらいだろう。

(次ページでは「88歳なのにベッド・シーンを演じるワケ」)

3.88歳なのにベッド・シーンを演じるワケ

 今作では、88歳のイーストウッドが演じるアールが麻薬を取り引きするホテルと、麻薬カルテルの住処で女性と肉体関係を結んでいる。しかも、両方とも女性2人だ。

 第77回アカデミー賞で作品賞や監督賞などの4部門に輝いた『ミリオンダラー・ベイビー』では、彼演じるボクシングの老コーチのフランキーが、若い女性ボクサーのマギーと唇を合わせる場面がある。公開時のイーストウッドは74歳だ。おそらく、今作はあの場面以来の艶めかしい演技だろう。

 だが、決して驚くべきことではない。劇中以外でもイーストウッドの乾きは健在だ。若い頃から女性関係はひどかったが、ここ10年だけでも彼の凄さがわかってもらえると思う。

 2013年に人生2度目の妻で35歳年下のニュースキャスターのディナ・ルイスと離婚すると、瞬く間に彼女と33年来の親友とされる女性と交際した。

 もちろん、その彼女とは破局する。けれども、その後も彼の恋愛遍歴は終わらなかった。自身が所有するホテルのサービス係である40代のクリスティーナ・サンデラと関係を結んだ。これまた30歳以上の年の差だ。

 現在は映画プロデューサーでミック・ジャガーの元恋人でもある、23歳のヌーア・アルファラと交際中だと噂されている。ついに65歳差に突入だ。

 今作の撮影時、イーストウッドは実際のアールと同じぐらいの年齢だった。しかし、弟子のブラッドリー・クーパーに「たくましいアスリートみたい」と言われるイーストウッド。彼はアールを演じるときに、年寄りの歩き方などは養鶏場をする自身の祖父を参考にしたと語っている。今作の2人の女性とセックスを楽しむ主人公は彼自身なのかもしれない。

(次ページでは「ふたりの親友に捧げた映画」)

4.ふたりの親友に捧げた映画

 今作はイーストウッドがフランス人で映画監督のピエール・リシアン氏と、アメリカ人の映画史家リチャード・シッケル氏に捧げた映画だ。

 リシアン氏はフランスで彼の映画をいち早く評価した人物だ。一方で、シッケル氏は彼のドキュメンタリー映画『クリント・イーストウッドの真実』や、彼公認の自伝『クリント・イーストウッド:レトロスペクティヴ』などで知られる人物である。

 思えば、西部劇『許させざる者』も、彼が師と仰ぐイタリア人の映画監督のセルジオ・レオーネ氏と、アメリカ人の映画監督のドン・シーゲル氏に捧げた作品だった。

 レオーネ監督は「スパゲティ・ウェスタン」や「マカロニ・ウェスタン」と呼ばれるイタリア製の西部劇『荒野の用心棒』で、イーストウッドを主演映画デビューさせた人物だ。レオーネ監督と出会いがなければ、彼は単なるテレビ俳優で終わっていた可能性も否めないのではないか。彼の無口で孤独なガンマンというイメージはレオーネ監督とともに始まったのだ。

 一方で、シーゲル監督は『ダーティハリー』の原型となった『マンハッタン無宿』や、『ダーティハリー』の監督を務めた人物である。単なる西部劇の俳優だったイーストウッドはシーゲル監督の力で、アメリカを代表する俳優になることができた。

 今作でもイーストウッドはお世話になった人への感謝は忘れない。ピエール・リシアン氏とリチャード・シッケル氏と言われて、ピンと来る人は少ないかもしれない。しかし、2人ともイーストウッドの親友だった。

 まだまだ語るべきことがあるイーストウッドの集大成『運び屋』。残り3つのポイントは後日公開する。

●公開情報
・『運び屋』原題:THE MULE
・2019年3月8日全国公開
・監督&出演:クリント・イーストウッド(『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』)
・脚本:ニック・シェンク(『グラン・トリノ』)
・出演:ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシア、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィ―スト、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ
・配給:ワーナー・ブラザース映画
・レイティング:G
・上映時間:1時間56分
・公式サイト

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『運び屋』クリント・イーストウッド最新作 4つのポイント解説!

(出典 news.nicovideo.jp)